2008年11月6日

漢字

■ 最近、韓国の小学校で、児童の意思疎通能力の向上のため、漢字教育再開の、ニュースがありました(これまでは中・高校で1800字学習)。15世紀に漢字を廃して作られた、朝鮮固有の文字、ハングルは表音文字です。日本語では、パソコンで例えば「こうじょう」と打つと、「工場」「向上」「厚情」「恒常」「甲状」「交情」「甲状」「高上」「口上」と出てきます。同音の漢字の多さには閉口しますが、字面で何とか、意味を把握し選択します。一方ハングル(漢字1字はハングル1字)は、日本語の話し言葉と同様、文脈から単語(漢語)の意味を理解する事になるので、今回の処置は、その非能率性を避けるため、漢字が持つ表意の働きの活用を、早い時期から、始めるという事でしょうか。

■ ところで、日本でも幕末から明治にかけ、欧化を急ぐあまり、漢字の廃止、果ては、「日本語を捨てて英語を国語にせよ」と、時の文部大臣・森有礼は、言語改革の必要性を叫んでいたそうです。(彼は人種改革も唱え、欧米人との混血を急げとも) つまり、明治30年代には漢字廃止は、国の方針ともなっていたようです。その後しばらく、言語改革論は「かな派」と「ローマ字派」に別れての、漢字廃止論争として続きました。そして敗戦後、再度、漢字廃止と日本語のローマ字化論(読売新聞が提唱)が持ち上がり、他にも、今から思うと突拍子もない、作家志賀直哉の、「国語をフランス語に」との提言があったりします。こうした状況の中、どさくさに紛れて1946年末、「当用漢字表」(1850字)が登場します。これは、将来の漢字全廃を目的として作られ、字体の簡略化、かなづかいなど、後に多くの問題を残す事になります。次いで、1981年には「常用漢字表」(1945字)が公布されています。何れにしても、現在、所期の目的はウヤムヤとなり、使用できる漢字数は、逆に増える傾向にあります。

■ 漢字の本家中国でも、清朝滅後日本と同様に、進歩の阻害要因と思われる、煩雑な漢字を、廃止する運動が起り、経過処置として暫定的に、簡体字が作られました。つまり、この間にローマ字(ピンイン)の普及に努め、将来は、漢字を全廃する方針だったそうです。中国語の横文字化です。しかし、当分の間は今のまま、でもいつか又、本来の字画の漢字復活の時が、来るかも知れません。言語はその国の、何より掛け替えのない文化なのですから。

■ ついでに。明治期、洪水のように押し寄せてきた外来語に対し、当時の学者たちは、懸命に漢籍などを参考に、漢字への翻訳に格闘しました。現在、日本語の言葉として使われている、政治、経済、法律、科学、思想、哲学、文化関係などの学術用語の多くは、当時の翻訳語(和製漢語)です。この大量に急造された翻訳語が、上記の同音語の増加を招く結果となります。そして、日露戦争後、急増した中国人留学生達によって、これら翻訳語(本質、労働、理想、理性、階級、共産主義、人民、共和などなど)が中国に持ち帰られなどして、現在、中国語として普通に使われています。詳しい辞書には、日本語と明記されているそうですが、一般市民にとっては関係なく、へたに「人民や共和は日本語ですよ」と言うと、「何いってんの?」と妙な顔をされてしまいます。漢字は本家中国の物、漢字に対するプライドはすこぶる高いのです。でも、社会主義も日本語なんですけど。

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